。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。



「忘れたかい?君は私の雇い主だ。


つまりはヤツらに何か動きがあると君に報告する義務がある」


玄蛇はまるで業務連絡をするように淡々と言って、あたしもそれと同じだけ淡々と


「何か動きが?」


とだけ目を上げて聞いた。


玄蛇は不機嫌そうなあたしを見て、軽く肩を竦め、


「動きがあったというよりも、むしろ見失った」


「は?」


意味が分からずあたしが玄蛇を睨むと、


「龍崎 琢磨はネズミと接触したようだが、ネズミを食い殺ろさず野放しにしている。


さらには龍崎 朔羅、そして虎間 戒、そして鷹雄 響輔。



この三人もそろって沈黙。なりを潜めている。




そして




以前からマークしていた


関西白虎会は


少し前まで騒がしかったが、今は白虎会長とその幹部たちが





行方をくらましている。




まるで嵐の前の静けさだ






恐ろしいほどにね。



それぞれの動きが全く見えない。



ヤツら。何を考えている―――?






さすがの私も、一気にこんな大物を相手にすることはなかったから、どこかで歪が生じたのか」






玄蛇は考えるように額に手をやり、あたしは目を細めた。


最強と謳われた殺し屋スネークは、今あたしの目の前で頭を悩ませている。



「関西の白虎会をマークしてたなんて初耳だわ。大阪まで目を光らせてたの?」


あたしがそっけなく聞くと、


「あれ?言ってなかったっけ?」と玄蛇はケロリ。さっきの悩んでいた様子はフリなのか疑いたくなる。


「初耳よ。あんたどーでもいいこと報告してくるくせに、肝心なこと教えてくれないんだから」


「あはは。すまない」


玄蛇はまたも軽く笑って、あたしは不機嫌そうに眉を寄せた。


全然“すまない”って思ってないでしょうが。


「行方をくらませてるって?消えたってこと?」


「正確には私の張ったハッキングに引っかからないと言うことだ。どの情報網にも痕跡がない」


玄蛇は両手の人差し指を立てて、目を細める。


明らかに状況は不利だというのにこの男にはまだ計り知れない余裕がある。


「優秀なハッカーが居るんじゃない?ネズミ返し…もとい蛇返しよ」あたしがまたもそっけなく言ってやると、





「まぁそうかもね。白虎会の鷹雄組は優秀なハッカーを幾人も抱えている。


やはり血なのだろうかねぇ。君がお熱な響輔もその手腕に長けていると思うよ?」


玄蛇は皮肉そうに笑って、自分のケータイをふらふら。


以前にあたしのデータを盗まれたことを指しているのだ。


いいえ、そんなこと今はどうでもいい。





白虎会、鷹雄組―――



響輔の




パパ?





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