。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
戒の気遣いと、マサの取り計らいで夕食はマサと戒、そして他の組員で準備すると言うことになった。
「お前は川上とゆっくりしてろよ」
去り際に戒が素に戻ってそっと耳打ちしてきて、
あたしはそれに少しだけ安心した。
「朔羅のお部屋ってはじめて入るかも~」
リコが僅かに緊張しながらもキョロキョロと辺りを見渡す。
「てか見たまんま、ラブリーな部屋だね♪ぬいぐるみがいっぱい♪」
リコは近くにあったあざらしのぬいぐるみ“マクラ”を手に取った。
それは戒が選んでくれて、叔父貴が買ってくれたぬいぐるみ。
そして頭の後ろにはキョウスケがつけてくれたリボンが。
ドキリ、と嫌な音を立てて心臓がなり、あたしは心臓の辺りに手を置いた。
そのときだった。
コンコン…
控えめなノックの音がして、
「お嬢……」マサの声が聞こえた。
「おう、開いてるぜ?」それだけ言うと、マサがピンクのフリフリエプロン姿で、可愛らしいトレーを手にしながら遠慮がちに入ってきた。
リコが居るから極力怖がらせないようにしているのか、でもそのピンクのエプロンが不似合い過ぎて逆に怖いっつうの!
「お嬢、アイスココアです。リコさんもどうぞ」
マサは緊張しているのか僅かに上ずった声で、ずいとトレーをローテーブルに乗せる。
こいつにとっては最上級のもてなしのつもりだろうが……
緊張で血走った目で無理やり作った笑顔が怖えぇよ。まぁあたしが友達を自分の部屋に呼ぶことがはじめてってのもあるけど。
「…あ、ありがとうございます……」
リコの声は震えていたが、それでもぎこちなく笑顔を浮かべてマサからトレーを受け取った。
タクの姿は見えなかったから、今あいつは貸金業で仕事中だろう。
(ついでに言うとキョウスケもまだ帰ってきてない)
とりあえずは良かった。
これ以上厄介なことを今は避けたいだけに、その事実がありがたかった。