。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。

*戒Side*




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** 戒Side **




泣き出しそうな新垣 エリナを追って俺もロッカールームに向かった。


今の時間帯、誰もロッカールームを使用してる者はおらず


俺と新垣 エリナ二人だけ。


新垣 エリナは俺に背を向けて小さく肩を震わせていた。


……な、泣いてるのかな…


俺が泣かせたわけじゃないにしろ、女の涙にとことん弱い俺。


どうすればいいのか分からず、それでもおずおずとその華奢な背中に問いかけた。


「…大丈夫か?まぁ、あいつの言うことは気にするな?」


何の慰めにもならないだろうが、後ろを向いたままの新垣 エリナに声を掛けると、


新垣 エリナが涙目になって振り返った。


ポニーテールの先が揺れる。


「…大丈夫。ごめんね…迷惑掛けて」


無理やりと言った感じで笑顔を浮かべて、ちょっと目元を拭う新垣 エリナ。


明らかに無理をしているようだった。


「そうだ…龍崎くんのシャツにグロスがついちゃったから、それふき取らないと…」


「…いや、俺の方はどーとでもなるし。てか足、大丈夫かよ」


俺は新垣 エリナの足元を見やった。


黒いハイソックスで足首は隠れているが、タイガの言ったことが本当なら靴擦れしているに違いない。


「だ、大丈夫!気にしないでっ」


新垣 エリナは慌てて手を振るが、無理やり浮かべた笑顔がわずかに引きつった。


「…っつ」


足首を押さえて僅かに屈み込む。


「大丈夫じゃねぇじゃん。無理すんなよ」


俺もちょっと苦笑いを浮かべて、ロッカールームに置かれた椅子に新垣 エリナを座らせた。


救急箱が置いてあるのを俺は知っている。


厨房担当のパティシェたちが怪我することもあるから絆創膏やら消毒液なんかが用意されている。


俺はその中から絆創膏を取り出して、新垣 エリナの足元に屈みこんだ。






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