。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。



「…叔父貴が何を隠してるのか知らないけど、叔父貴の本心をさらけ出してくれない限り、あたしは聞くに聞けない。


叔父貴を受け入れるわけにもいかない」


あたしは叔父貴の漆黒の瞳を見据えて、叔父貴を押し戻した。


叔父貴の胸に突いた手を、叔父貴はひやりとした手のひらでゆっくりと包んだ。


悲しそうな…寂しそうな……一言で言い表せない複雑な表情を浮かべている。




「お前を愛しているということは本心だ」





その手付きは思いのほか優しい手付きで、この一瞬強く固めた何かがぐらりと歪む気がした。


慌てて頭を振って、もう一度叔父貴を見上げると、





「それが本当だとしても、あたしは戒が好き。



あいつじゃないとダメ。あいつがいいんだ」



もう遅いよ―――




叔父貴はもう一度悲しそうな翳りのある表情を浮かべてあたしを見下ろし、


「分かってる。俺がそう仕向けた―――」


静かに言い放った。


決して大きな声じゃないのに、その声は広い部屋に響いて、叔父貴の悲しみや寂しさが呼応しているかのように響き渡った。


あたしの手を自分の頬に持って行き、愛おしそうに、まるで感触を忘れないようにしっかりと焼き付けるように……




「今更だと分かったいた。



俺の気持ちは永遠にお前に伝えるつもりはなかった。




お前を苦しめるだけだと思っていたから」







< 9 / 776 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop