いつまで経っても
奴と私
人の能力・性格形成の過程において、育った環境が多大な影響を与えると誰かが言っていた。この論自体は納得できる。


けれど。


この論を100%信じるならば。


私と奴にも、似た部分があっていいと思う。ほんのちょっぴり、爪の甘皮程度でも。

同年、同日に仙人と異名をとる同じおじいちゃん産婦人科医に手助けされて生を受け、気のあった母親達がママ友になり…その上実家が極近くというお約束な縁もあり親交が深い。
 クラスは違った時もあるけど幼小中は同校。

 習い事も一緒だった…というか、私が家業のパン屋の手伝いをしている間、奴は看板息子の顔してカウンターに陣取り、手伝い終了後奴の家で奴の家庭教師に勉強を教わっ――ている奴の傍で私は、素知らぬ顔で耳を澄ましてた。

 授業料?なにそれ美味しいの?まぁまぁ、美味しいパンでもどうぞ――ってな具合で。


あれ習い事よね?……うん、まぁとにかく。


誕生直後から体も心もめきめきと成長する思春期まで、ずっと同じサイクルを過ごして一緒にいた。
 取り巻く周囲の顔ぶれも同じだし、これだけ条件が揃えば、たとえ男女の隔たりがあるとしても少しぐらい似て良い筈じゃない?

 せめて性格や思考回路の末端くらい把握出来てもおかしくない…はず。

 字を習い始めた幼稚園児の頃からつけてる日記は、奴とのこっぱずかしい記録で7割り方埋まってる。

 性格研究資料に事欠かないのだが、私の頭では何度読み返しても奴の事が理解できなかった。
 いっそ私より頭が良い奴のファンである娘さん達に売れば高値が付くよね……いや、レンタルにした方が永続的に利益がでるかな?

…って私の私生活も明るみに出るわ!危ない。
商人思考ヤメヤメ。





すぅーはぁー(深呼吸)





よくよく考えてみると――全く似ていない兄弟姉妹も多々存在しているから、あの理論の信憑性は低いのかもしれない。

それとも、兄弟姉妹という小さな枠組みを外し、世界規模で比べた大雑把な話だったのかな…って、そんな訳ないか。

 ただ単に私と奴がどこまでもあわないんだよ。きっと。


昔から私達はそうだよね。

 
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