桜花舞うとき、きみを想う
ぼくときみの意見が一致し、新婚旅行先は伊豆に決まった。
出発の日はあいにくの雨だった。
「伊豆のほうも雨かしら。明日は晴れるといいわね」
駅で、きみが空を見上げた。
「きっと晴れるさ」
ぼくも並んで上を見た。
分厚い雲に覆われた東京は、湿気がひどく、肌がべたついた。
「さ、気をつけて行ってらっしゃいな」
父は仕事で来られなかったが、ひとりで見送りに来てくれた母に手を振り、ぼくらは列車に乗った。
窓の向こうで手を振る母が、どんどん小さくなった。
まだ暑さを存分に残す晩夏。
ぼくらは、2泊3日の旅に出た。