桜花舞うとき、きみを想う


出された昼食は見た目にも腹にも満足で、思わぬ形でご馳走になり飲食店を探す手間が省けたぼくらは、時間に少し余裕ができた。

かといって特別やり残したこともないので、腹がいっぱいになったぼくは、広い畳に大の字になった。

「さっき浜で歩いておいてよかったよ。そうでもなければこんなには食べられなかった」

すっかり膨らんだ腹を撫でると、きみが笑った。

「礼二さんったら、まるでお腹に子供でもいるみたい」

「アヤ子だって、脱いだら同じだろう」

「そうかもね。だってここのお料理だったら、いくらでも入っちゃうんだから」

きみも自分の腹をさすった。

「でも、ひとつ心残りを言えば、やっぱり大きな富士を見たかったわ」

少し寂しげに眉を下げたきみに、ぼくは寝転がったまま、

「じゃ、いつか、うんと近くで富士を見よう」

と言った。

きみはうれしそうに微笑んで、何度も頷いた。



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