アゲハ~約束~
「どうだ、こんど俺と泊りがけで伊豆に写真旅行にでも・・・」

「寝言は布団の中でお願いね、正人兄。チビたちーっ!写真撮るよー!!」

「・・・」

「・・・なんか、アゲハ、一皮向けた感じだねぇ。」

「・・・まったくだ。」



 子供たちに積極的にかかわってゆくアゲハ。

 昔の彼女からは想像できないものだ。



「アゲハ!こっちとって!」

「アゲハ!こっちも!」



 アゲハを呼ぶ声が、あちこちから聞こえる。

 そして、アゲハは笑顔をそれに向ける。

 ここに、「彼」の声がないのは非常に寂しいが・・・

 アゲハはもう、それを乗り越えたのだろう。


 そして、また誰かが、アゲハの名前を呼んだ。




「アゲハ!」

「はいはーい!」



 大人の、女性の声。

 園長だと思って振り返ったアゲハの目の前にいたのは、見覚えのない、しかし何処か懐かしい顔をした、男女の姿だった。

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