アゲハ~約束~

5.

「なぁ・・・アゲハ。」



 卒業生たちの輪の中で弁当をつついていると、不意に、二代前の卒業生のうちの一人がアゲハに声をかけた。



「さっきお前の後から走ってきた外国人・・・」

「・・・」



 ルフナの話が聞きたくなくて、アゲハはじろっと彼をにらむ。

 けれど、彼はそんなこと気にせずに、自分の聞きたいことを躊躇なくアゲハにたずねた。



「・・・あの人、なんていう人?」

「・・・」



 失敗したな、と、アゲハはため息をついた。

 多少苦手でも、幸人や夏梅と一緒に子供の相手をすればよかった。



 今アゲハの迷惑を顧みずにたずねてきている彼は、正人といった。



 確か、大学で写真サークルに入った人間のはずだ。


 特徴は、強引。


 とにかく自分の本懐を遂げるまで、あきらめるということはしない。

 それが判っていたから、アゲハも仕方なく、彼の質問に簡潔にだが、答えた。



「・・・ルフナ=ウォーカーっていう写真家。」

「ルフナ・・・」



 彼はその名前を反芻して、はっと顔をあげる。

 そして、そこらへんにあった空のペットボトルをなぎ倒して、子供の相手をしているルフナに駆け寄った。


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