アゲハ~約束~
 本当は、誰よりも素直で。


 ―――ただ、不器用なだけの子だ。


 誰よりも不器用で、そんな自分を疎んで、けれど離れられないことに、コンプレックスを感じて。



 ――――そんな彼女が・・・可愛らしく思えた。




「・・・アゲハだって・・・素直だよ。」

「そんなんじゃないわ。」

「ううん。・・・素直だよ。」

「・・・」



 ――――アゲハは返事をせずに、また手際よく食器を片付け始めた。

 それをみて、思い出したようにルフナも食器を拭く。

 しばらくの間、ここには食器の重なり合う音しかしなかった。



 けれど、ルフナの中ではもう一つ、心臓が拍動する音が響いていて―――・・・



「・・・じゃぁ・・・終わったから、私は。」



 仕事を終えて、食堂を出てゆこうとするアゲハの手を、ルフナは、反射的にとっていた。



「―――あのさっ」

「・・・え?」

「・・・君を、撮りたい。」

「え―――・・・?」

「君の事を、写真に撮りたい。撮りたいんだ。」


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