アゲハ~約束~
 緊張で、脳みそががちがちになって、うまい言葉が出てこない。



「笑ってほしいんだ。」



 出てきた精一杯の言葉は、それだった。

 アゲハはそんな彼を見て、不思議な感覚に包まれていた。


 彼の、まっすぐな瞳。

 それに、自分がうつる。


 まっすぐな人は嫌い。



 だけど―――・・・



 さっき、自分を素直だといってくれた彼に、昼間抱いたような不快感を抱くようなことはなく。



「・・・あなた・・・偉い写真家なんでしょう?・・・もっと他に、撮るものがあるんじゃないの・・・?」



 自分のそんな言葉に、



「俺は俺が撮りたいものを撮りたいんだよ。俺は、君の笑顔を見て、それを撮ってみたい。」



 そんな言葉を返してくれるのが、すごく、嬉しくて。

 彼がすごく、まぶしく思えた。

 けれど、それは心地のいいまぶしさだった。



 ―――惹かれた。





「・・・か・・・勝手に、撮って。」



 でも、そんな、「彼の光に惹かれている自分」がなんだか恥ずかしくて、アゲハは、つかまれた手を振り払って逃げるように食堂を出てゆく。



「・・・うん。」



 残されたルフナは振り払われた手をじっと見つめてから、ぎゅっと握り締め、彼女が出て行ったドアに向かってまっすぐに言った。



「勝手に撮る。」



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