アゲハ~約束~

3.

「はいはーい、入りますよー。妙なことしてないですかー。」



 六時。

 幸人が、お盆を抱えて部屋にやってきた。

 ルフナが力の抜けた笑顔で「してないよー」と笑うと、脱力したように苦笑いする。



「ほら、飯。今日はカレーな。」

「ああ、ありがとう。」

「アゲハは?」

「・・・まだ、寝てる。」

「・・・そっか。ま、疲れもたまってんだろ。」



 幸人はそういって机にカレーの乗ったお盆をおくと、夏梅の机の椅子を引き寄せて、自分もそこに腰掛けた。

 そして、しばらく黙りこむ。



「・・・どうした?」



 ルフナが心配してその顔を覗き込むと、幸人は複雑な表情で、ルフナを見つめ返した。


 そして、視線をそらして、たずねた。



「・・・あの、さ。」

「うん。」

「ルーはさ。」

「うん。」

「・・・好きなの?アゲハのこと。」

「・・・好きだよ?」

「・・・」



 迷う時間もなく、彼が返事をしたから、わかった。



 ああ、この人は、自分の言ったのと別の次元にある「好き」を答えてる。




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