アゲハ~約束~
第三話:別れ、と、始まり

1.

 七月―――・・・


 蝉が、ジーワジーワと喧しく騒ぎ立てる季節になったころ。

 それは突然の言葉だった。



「オレ・・・そろそろまたすこし旅に出るよ。」

「―――――・・・」



 昼食の素麺をすすりながらの、彼の、突然の発言に、アゲハは何も言わずただルフナを見つめた。



「まぁ・・・本当に?」



 その隣で一緒に食べていた園長が尋ねると、ルフナは小さくうなづく。



「一応、世界中の写真とって回るのがオレの夢であり、仕事だから。」



 それをやめることは出来ないよと、彼は、いつもどおりの穏やかな笑みで笑う。



「といってもさ、また日本に戻ってきたらここにおいてほしいんだけど。」

「それはもう・・・よろこんで。」

「ありがとう御座います。」

「・・・」



 笑う、彼を見て。



 ―――アゲハは、胸が苦しくなった。


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