アゲハ~約束~

2.

 ある日アゲハは、ルフナと海へ出かけた。

 学園は歩いて五分で海岸に出る。


 だから、海へ行こうといって海へ行ったというよりは、散歩の末に海へたどり着いたという感じだろうか。


 シーズンオフの海には誰もおらず、ただ赤い空と青い海が、地平線の向こうで溶け合っていた。

 アゲハは、ビーチグラスや貝殻を拾って歩く。

 そんな姿を、ルフナは写真に収めてゆく。



 波の音しか聞こえない、静かな時間だった。




「そんなに拾って、どうするの?」




 ルフナが、笑いながら言う。

 アゲハの手のひらには、小さな貝殻やビーチグラスが小さな山になっている。

 アゲハは、自分でもそれに気付いて笑う。



「夏梅がね、好きなのよ。ビーチコーミング。」



 最近はやらなくなったけど・・・といいながら、拾ったものを仕分けするしぐさは、なれたものだ。



「つき合わされてるうちに、慣れちゃった。」



 そういって、彼女は柔く笑う。



「あの子、すごいの。キャンドルホルダーとか作るの。器用なのよ、すごく。・・・そういうところ、うらやましいな。」



 仕分けをしながらそういっていると。



「・・・ふふ。」



 ルフナが、小さく笑った。




< 77 / 146 >

この作品をシェア

pagetop