恋花よ、咲け。




「…知らなかった。」


舞未の声は泣き声で 俺は焦った。


「舞未まさか…。」


謝る前に出たのは 確認の言葉だった。


だが舞未は黙り 涙を拭った。


代わりに答えたのは弘也だ。


「何だ 二股はどっちなんだよ。
そんなに悔しいのか?」


俺は答えなかった。


やがて弘也は歩き出し 見えなくなった。


涙を拭い 頑張ってつくる笑顔を見せて
舞未がそっと口を開いた。


「…私ね まだ弘也の事が好きなの。
今日は それを伝える為に
最寄りの駅で待ってた。
弘也は驚きもせずに私を見て
まるで必要としていないようだった。」


舞未の声はしっかりとしていて
澄んだ冷たい空気を震わせる。


「…本当はね ちょっと喫茶店とか
ゆっくりできる所に寄るつもりだったんだけど
弘也があんまり あからさまに…」


舞未が言葉に詰まったようで
もごもごと唇を動かす。


「ゆっくりでいいよ。 座ろうか。」


俺は舞未の話を聞きたかった。




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