恋花よ、咲け。
特に急がず 非常階段に向かった。
正直 出たくなかったんだよな。
俺らが付き合ったあの日から
結局 付き合う前より距離があいた。
俺じゃなくて 舞未があけた。
でも 俺があけさせたんだ。
すでに電話は切れていたから
風が強く吹き付ける非常階段で
俺は舞未に電話を掛けた。
「…あ、舞未? どうした?」
「弘也 授業中じゃないの!?」
何だこいつ…分かってて掛けた確信犯か!!
「ばりっばり授業中。
数学真っ最中。」
嫌味っぽく言うと 「ははっ。」と笑い謝った。
「ごめんね?
今 ウチはお昼だから。
絶対授業中だって思って 掛けたの。」
「完全な確信犯だなお前。
こっちはわざわざ抜けてきたのに。」
眼下に広がるグラウンドを駆ける
小さな人間たちを目で追いかけた。
誰か識別できないほどに小さい。