《完》BLOODMOON~あやかしの花嫁~
爽爾と同じ九尾の尻尾を持つ男が俺を物見高に見つめていた。


「父上」


ヤツが父上?ってコトは『天狐(テンコ)』


下界に棲む『野狐』や『気狐』のように悪さはしない善良な狐で滅多に姿を見せない。

なのに、どうして…下界に…何故、俺に刃を向ける?



「俺が相手だ!!小笠原知弥!!!」


『天狐』は再び、猛突進で、俺に向かってくる。


俺は腰の対極刀を鞘から抜き去り、『天狐』の渾身の大太刀の刃を受け止めた。


妖の中でも『天狐』は神に近い恐るべき、力の持ち主。


『天狐』の力に俺は躰を吹っ飛ばされた。


500年…この地に根を張り、大樹へと成長を遂げた桜がいともあっさりと『天狐』の力でなぎ倒された。


大樹の下敷きは免れたが…怪我を負い、思うように躰が動かない。

「お前の力はその程度か?『討魔師』の名前が泣くぞ!」


「何故?悪さをしない善良な『天狐』が俺たちに人に刃を振るう?」


「我が父上、『仙狐』のためだ!」


「『仙狐』?」


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