二人のひみつ基地
い・お・り?


メンバーたちの名前を叫ぶファンの子達の声に交じって、私はその忘れもしない名前を何度も復唱していた。


相沢伊織……


私はそれからずっとこのシークレットのライブの中キーボードの相沢伊織だけを視界に入れていた。


多分……この大音量の音も聞こえていなかった。


私はそのとてつもなくかっこ良く成長した伊織君に釘付けだった。


楽しそうに時折、陸君と笑い合う姿はどんな女の子でも悲鳴を上げてしまいそうなくらい絵になっていてかっこ良くて光って見えた。


まさに彼はステージの上でスポットライトを浴びていた。


あの、いつも泣いていた伊織君の姿は何処にもなくちゃんと自分の存在をアピール出来てそれを回りが認めている。


あの頃の伊織君はもう何処にもいなかった。


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