二人のひみつ基地

すべての曲が終わって、会場に灯りが灯された。

ステージ上の五人の男の子たちは、満足そうに笑顔を浮かべて挨拶をしてステージ脇に消えた。

会場内の客はそれぞれ出口に向かって流れ出した。

私達もその流れに押されて出口に向かった。

そんな中でも光哉はずっと私の手を握ってくれて、どこにも逸れないようにと私をエスコートしてくれた。

出口のドアの所で裏口から出たと思われるシークレットのメンバーが先回りして、ずらりと並んで一人一人のお客と握手をしている。

その時は光哉も私の手を離して私より先にその握手に参加した。

私の順番が来てベースの子。

「ありがとうね」

ギターの子

「ありがとう。また来てね」

ドラムの子

「ありがとう」

そして……


「沙織ちゃん?」



握手をして通り過ぎようとしたのに伊織君は私の手を握ったままそう言った。


長くて綺麗な手が私の手を包む。


絶対分からないと思っていたのに伊織君は、ちゃんと私の名前を呼んでくれた。

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