二人のひみつ基地
「沙織ちゃん!!」
そう叫んで伊織君が思いっきり私を抱きしめて来た。
椅子に座ったままの私は膝立ちした伊織君に抱きしめられた。
「やめろよ。俺の汚れた血なんか舐めるなよ。沙織ちゃんまで汚れちゃうだろ」
「舐めろって言ったからだよ。それに伊織君は……汚れてなんかいないよ」
「確かに言ったけど……冗談なのに……」
「でも……目は真剣に見えた」
「……」
「真剣に言えば……沙織ちゃん……何でもしてくれるの?」
私の耳元でそう囁く。
「うんって言ったら?」
伊織君が私を腕の中から離してお互い見つめった。
少し釣り上がり気味の大きな黒目勝ちな瞳は
とても綺麗で澄んでいて……
夜の湖のようで
どれほどの深さなのか計り知れない。
その瞳に今、映っているのは
紛れも無く私で……
この瞳の前では頷くことしかできない。
「目……閉じて」
言われるままゆっくりと目を閉じた。