二人のひみつ基地
「私……ちょっと話し掛けて見る」

愛子はそう言ってイケメン君の居る方に向かった。

彼女の母は町内会兼商店街の会長をしているほどでその血を受け継いだのか普段はボウっとしているくせに気になった事は直ぐに行動に出るタイプだ。

私は席に着いたまま聞き耳を立てる。

「あー。すいませーん。窓、閉めてもいいですか?」

そう話し掛けられたイケメン君が

「いいよ。ちょっと風が強くなってきたもんね。ごめんね。気が付かなくて」

「私、二組の鳥越愛子っていいます。名前……聞いてもいいですか?」

愛子は素知らぬ顔で窓を閉めながらそう言う。

「うん、僕の名前は後藤 陸です」

「陸君?」

「うん」

「うわぁー。私の中では上位に位置する名前だな」

おーい。イケメンミーハーの顔が見え隠れしているぞー。

っと叫びたくなった。

「上位?」

陸君はちょっと変な顔をしていた。

「ううん。じゃぁね」

愛子が廊下側の私の席に戻って来た。

陸君はこっちの方を向いて一回二コリと笑った。

確かにカッコイイ。

「うん、陸君いいよ。うん。大変いい」

愛子は一人そう納得している。

「うん、何が良いってあの声がいいわ」

今度は声フェチかぁ?

確かに言われて見れば良く澄んだ声なのにどこか、掠れていて……

何て言えばいいんだろ……ハスキーで

「色気がある?」

私の机に頬杖をついた愛子が私の言葉に反応する。

「そう。まさにそれよ。色気があるの」

授業開始のチャイムが鳴った。

愛子は席を立って

「あのルックスにあの声……陸君、タダモンじゃないような気がする」

そう言いながら教室を出て行った。

じゃぁ、何モンだぁ?と心の中で愛子に問いかけた。
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