ひとまわり、それ以上の恋

 終業チャイムが鳴った途端に、「お疲れさま」と言い合い、すっとデスクから立ち上がる先輩たち。時刻は十七時。今週はノー残業デーだとかで、強制的に仕事は終了だ。

 私も……なんとか仕事終わった……だけど立ち上がれない。目が痛い。肩が重い。腱鞘炎になりそう。ありとあらゆる雛型が夢の中にまで出てきそう。

 とにかく残業はしちゃいけないのは分かったけど、もう少しこのまま突っ伏していたい気分――。

 デスクワークってこんなに疲れるんだ……。
 今日移動したのは、応接室の準備で庶務課の人員が足らなくてお手伝いに行ったことと、資料室や備品庫を案内されたことと、副社長室のお掃除くらい。

 あとはパソコンに張り付いて、社内文書をメールしたり、ひたすらデータを叩きこんでいたのだった。

「お疲れさま。大丈夫?」

 峰岸さんの声に目が醒める。トンと肩をなだめるように叩かれて、私は弾かれたように顔をあげた。
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