ひとまわり、それ以上の恋

 その日の晩は、デザインラフとサンプル生地の分厚いブックを見せられて、何着か彼に見せられた。

 どれもこれもまだショップはもちろん先行販売の通販でも売られていない商品だ。

 プライマリーの下着に恋している私にとって、宝の山々。そんな私を見て、市ヶ谷さんは笑っていたけど。

 シンと静まり返ったリビングで二人きりということを今さら意識してしまって。

 モデルになって欲しい、と言われたことがちらつき、緊張する。まだその件には一言も触れていない。

「展示会も、行ってみたかったな……」

「今度、連れていくつもりだよ。楽しみにしているといい。君が好きなのはどれ?」

「誘うブラシリーズの、これが一番好きです」

 私が手にとったのは、お気に入りシリーズの一品。触れるだけでふわっと甘い桃の香りがする。

「桃の香りがする……男にも好評みたいだね。社長がリッテル社と共同で考えたものだよ。初夜用にって」

  初夜用……と聞いて、私は急に恥ずかしくなってきてしまった。幾ら自社製品について語っているとしても、男の人とこうして下着を手にしてるなんて。
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