便利屋
俺の問いかけに、さっきの嫌悪なんて全く感じさせない笑顔を振り撒く。
何度も大きく頷く。
奈央の笑顔につられ、俺もシュークリームにぱくりとかじりついた。
ほどなくして、口のなかに広がる嫌気のない甘さ。
『…うま。』
さすが、並んで買うだけあるなこれ。
「おいしいでしょ!?もう幸せすぎるよ〜…」
奈央はパクパクとシュークリームを頬張ってゆく。
最後の一口を飲み込めば、まだ一口しか食べていない俺を怪訝そうに見る。
「…食べないの?」
こんなにおいしいのに?
もったいないじゃない。
奈央の心の声が聞こえてくるようだ。
『ん。…奈央にやるよ。』
困ったような表情をする奈央に、俺は続ける。
『おいしいけど…俺、そんなに甘いもの得意じゃないから。』
毛嫌いするほど、甘いものが嫌いなワケじゃない。
だけど、奈央の食べてる姿を見たら…シュークリームも俺じゃなくて奈央に食ってもらったほうが幸せだろって。