先生とシンデレラ
「…今時社交ダンスとか、学校もすごい事考えるよね。」

「本当ですよね…」

「相手が」

…。

先生は一回そこで言葉を切った。

「優希だから、安心だね。」

「…」

「他の男の子達よりやりやすいんじゃない?」

私は手元にあった視線をパッと先生に向けて
「そんなわけっ…ないじゃないですか…!」

「…へぇ。何で。」

「…そ、れは」

…わかってるくせに。
私が黙ると先生は少し自嘲気味に笑って
「…優希もばかじゃないんだしきっと上手く羅々をフォローしてくれるから安心しなよ。」

「…」

何で。

「…先生は、」

下を向きながら、ぎゅっと唇を噛み締める。

「羅々のダンスの相手が優希で良かったって思ってるよ。」

何で,そんな事言うの?
私が傷つくってわかってるくせに。

私は何かを書き続けている先生の元にコートを着たまま、近づいていった。

先生は相変わらず顔を上げないので、近づく私に気づいてるのか気づいてないのかも分からない。

私は先生がいる教卓の前までいくとやっと顔を上げた先生の目を真っ直ぐに見ながら
「…っ本当に、そんな事思ってるんですか…っ」


< 168 / 449 >

この作品をシェア

pagetop