先生とシンデレラ
ようやく涙が止まって、とっくに始まっている授業に出ようと、歩き出すと。

「…っ長谷川!!」

そう呼ばれながら、肩をガッと掴まれて進行方向と逆の向きに回転させられた。

「…三浦君」

振り向いたそこには、少し汗ばんでいる、まだ息を弾ませたままの三浦君がいた。

三浦君は私の顔を見て少し眉を寄せた後、
「…大丈夫か?」



何の事?

なんて聞かなくても分かってる。

「…うん」

私が笑ながらそう言っても、まだ、三浦君は不安げな様子で
「でも、まだ涙が「本当に!」

普段出さない様な大声に。

目の前の三浦君は目を見開いた。

「…大丈夫だから。」

三浦君の鋭い目から逃れる様に目を逸らす。

「…心配、してくれてありがとう」

絞り出す様にそう呟く。

それ以上言う言葉がなくなって、下を向いたまま黙っていると。

三浦君が深く息を吐く音がして、
「…そっか。じゃ、授業いこーぜ。」

その言葉に思わず顔を上げる。

三浦君は、笑ってた。

「…」

「なんて顔してんだよ?早く行かないと、怒られるぞ!」

三浦君は、まだどうして良いかわからない私を抜かして歩き出す。

「…ほら!」

振り返って笑う三浦君に。

助けられた気がした。

「…うん」
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