先生とシンデレラ
先生の隣のソファに、三浦君の手を借りながら、ゆっくりと座る。

「長谷川、俺はあのおかまとダンスしてくるから、おとなしくここにいるんだぞ。」

「…うん。わかってる。」

三浦君の顔は見れないまま。

下を向いてると、曲が始まった。

パッと顔を上げると、軽やかに踊る三浦君とトオルさん。

三浦君の顔は引きつってるけど、トオルさん楽しそうだな。

それにしても。

やっぱり三浦君はダンスが上手い。

あのトオルさんのダンスについていけるなんて。

それに比べて。

私は。

思わず凹んでいると、先生が
「…羅々、今日はもう帰った方がいい。送ってあげるから荷物持ちなさい。」

「…!でもっ、まだ練習が「その状態で練習出来ると思ってるの。自惚れないでくれる。倒れられたらこっちが迷惑だよ。」

先生は冷たい目で私を見下ろしていた。




帰りの車の中、二人は何も話さなかった。

話す内容もなかったし、そんな雰囲気でもなかった。

久々に乗った助手席から先生の横顔をみると、先生はずっと眉間にシワを寄せていた。




「…ありがとうございました。」

家の前に車が止まったので、一言お礼を言って外に出ようと窓の方を向いてドアノブに手を掛けると。

「…羅々」

優しく、そう呼ばれた。
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