先生とシンデレラ
私が黙っていると。

先生は私が顔を逸らした距離と同じ位の距離、また顔を近付けてきて。

「…だって…!」

私がやっとの想いで声を絞り出す。

すると。

「"だって"、何。」

私がまた顔を逸らすと、また顔を近付けてきて。

そして私がまた顔を逸らすと、また顔を近付けてきて。

これじゃあ顔を逸らした意味がない。

そんな事をしていたら、先生は痺れを切らした様でもう一度、
「何。」
と言った。

私が渋々、
「…っ近…い……です……っ!」
と言うと。

先生は小動物を狙った肉食動物の様に。

まるで面白い玩具でも見つけた様な眼で。


「"近い"から何。」
と言った。

"近いから何。"って…。

また先生は顔を近付けてきて。

「…何…って…。」
と言うと。

「…何。」

また顔を近付けてきて。

私はとうとうその近すぎる距離に限界を感じて、ガタン、と席を立って先生と距離を置いた。


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