葵先輩は冷たい。




父親に捨てられ、親戚にも受け入れてもらえず… 中学生にして、あたしは1人暮らしを始めた。


お金は溢れる程にある。

きっと、それは同情で。もしくは、せめてもの罪滅ぼしといったところだろう。


別に何も思わない。
いや… 無理矢理何も思わないと思うようにした。感情を、押し殺した。



こんなに涙が出るのなら。
哀しみの感情なんていらない。

こんなに傷付くのなら。
もう誰も信用しない。



あたしは父親の姓を捨て、母親の姓を名乗るようになった。


何度死のうとしたか分からない。
でも、死ねなかった。



ーーそれは怖かったから。


結局、勇気がなかった。
生きたいという欲を捨てきれなかった。


そして。


あの人に出逢ってしまった。

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