葵先輩は冷たい。




東中の、永瀬葵ーー


年はあたし達より1つ上で。

色んな事務所からスカウトされる程の美貌を持つ、容姿端麗な人。


そう、もっぱら噂の人だった。


西中のあたしですらその名前を幾度となく聞き、中には追っかけみたいな子だっていた。


彼には、人を惹きつける魅力があったのだ。……愛される、素質があったのだ。



当時のあたしは、そんな彼を素直に羨ましいと思った。

だけどそれと同時に憎くもあった。



顔を見たことはないけれど、どうせ何の苦労もなしに生きてきたに違いない。その噂になる程の外見だけで、色々な人に愛されてきたのだろう。



狡い、狡い、狡い…

なんて、狡いんだ。


どんなに笑顔を作っても。愛想を良くしても。


あたしは誰からも
愛されないというのにーー




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