葵先輩は冷たい。
まして、あたしは泣いてない。
涙など… もう枯れたのだ。
「意味分からないです。」
あたしは思ったことを率直に述べた。
それは目を背けたい事実でも、やっぱり揺るぎ様のない真実でもあるのだ。
この差は埋まらない。
絶対に… 拡がる一方なのだ。
「あなたは愛されている。」
あたしとは違って。
疎まれるあたしとは正反対に。
みんなから、ちやほやされてきたんでしょう?
「どうしてそんな事言えるの?」
「え?」
「確かに… 俺は色んな人に愛されているかもしれない。こんな顔に生まれたわけだし。でも、本当に愛してもらいたい人には愛してもらえなかった。」
「………」
「俺、施設育ちなんだよね。捨てられたの。両親の顔も名前も知らない。まあ、要らない子だったわけ。」
苦笑いを浮かべながら、長い睫毛を伏せる彼。
彼の言った"要らない子"というフレーズに、あたしの肩はびくりと震えた。