葵先輩は冷たい。
あたしは彼に合わせるように、ニコリと作り笑いを浮かべた。
無論、彼は素で笑っているのだろう。しかし、あたしにはそれが出来ないから。笑う意味を失ったから。 こうして偽物の笑顔を作る。
もう…… 慣れたことだ。
「君、いつもここにいるよね。」
「え?」
「帰り道… いつも君を見てたから。何してんのかなって。」
ガサゴソと鞄の中を漁りながら、淡々とした口調であたしに話し続ける。
彼もまた、変な人に違いない。
でもそんな彼の話に耳を傾けているあたしは、もっと変だ。
「ずっと気になってたんだ。」
「……はあ。」
「いつも苦しそうな顔して、寂しそうに泣いてるから。」
「…………」
「少し前の、俺みたい。」
「は?」
"俺みたい"……?
この人は何を言ってるんだ。
変だ、変。少し、おかしい。
だってそうでしょう?
似ているはずないじゃないか。
むしろ、真逆だと言うのに。
貴方は誰からも愛される。
だけどあたしはそうじゃない。
それが差なのだ。
不平等と言われる、立場の差。
似ているはずがない。