蒼穹の誘惑
自分にどうしろと言うのだろうか、目の前で額に脂汗をかき、唾を飛ばしながら、熱弁をふるうこの老人たちは、たかが三十やそこらの小娘の言うことなど耳も傾けない。

ならば、何故自分も彼らの意見に従う必要があるというのか?

高宮に言わせれば、みずきがそんな態度だから、相手もムキになるのだと。

みずきも最初からこんなふてぶてしい態度を取っていたわけではなかった。

一年前に社長に就任した頃は、まだ「何もわからないお嬢様」の仮面を貼り付け、副社長でもある叔父の後ろに立っていた。

だが、もともと勝ち気でプライドの高いみずきである。

大人しく傀儡に成り下がるつもりはなかった。

もっと上手く立ち回れたかもしれないが、自分の力を試してみたい、そんな好奇心が仇となり、役員の大半を敵に回してしまった。

「先代の亡霊を引きずっている」と高宮は言った。


(全く一年も前に死んだ人間のことを……)


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