蒼穹の誘惑
役員会議に呼ばれたあの日-----
会議室の前で立ち止まり、ドアノブに添える手の震えがとまらなかったのをよく覚えている。
みずきはこれから起こるであろうことを全て受け入れるつもりでいた。
目を閉じ、大きく深呼吸をすると、意を決し、ドアを勢いよく開けた。
「皆さん、お待たせしました」 と軽く頭を下げ、何事もなかったように悠然と微笑んだ。
ドアの傍に立つ高宮に着席するよう促されるが、みずきは首を横に振る。
「ここで構わないわ、早く本題に入りましょう」
みずきは毅然とした態度でその場に立った。
重い空気を断ち切るように口を開いたのは、副社長の隣に座る専務の西条だった。
「社長、長くなりますからご着席ください」
「あら、私はまだ社長なの?もうその席はないのかと思ったわ」
みずきの言葉に、事情を知らない数名の役員の表情に動揺が走る。
これくらいのフライングと皮肉は許して欲しい。
忌々しげにこちらを睨む栄次郎を視線の端に捉え、みずきは不敵に微笑んだ。