蒼穹の誘惑
友人からの電話を待っている間、頭の中で起こりうるシナリオの全てを想定する。

どの会社でもそうだが、株主総会前は、色々と嫌がらせや妨害の電話がかかってくる。

だが、それは、代表電話にかかってくることが多く、役員や管理職社員を名指ししてきても、個人の携帯にかかってくることなどない。

悪戯でなければ、目的は何か?

たかが秘書という肩書の自分にかけてくる目的は二つ。

個人的怨恨、もしくは、長谷川の内情に詳しい者による仕業-----

最悪のシナリオが思い浮かんだ時、手の中で握りしめていたスマホが再度振動した。メール受信を告げる短い機械音が鳴りやむ前に、メールを開く。

そこに短い文章と共に添付されていた写真を見るや否や、高宮の綺麗な横顔が歪んだ。

手にしたスマホを投げつけそうになったとき、再度着信音が鳴った。

着信相手は先ほどの友人だ。もう返答を聞くまでもない。

「あぁ、俺だ……そうか、わかった。すまなかったな、ありがとう」

静かに通話を終え、高宮はこみ上げてくる怒りを必死に収めた。



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