蜜色チェーン―キミと一緒に―
◇幸せの約束


「えっ、笹川専務が?」
「そう!」


翌日会社に行くと、私を見るなり愛美が「笹川専務、辞めたんだって!」って興奮気味に言ってきた。
あまりに唐突すぎて聞き返した私に、愛美が力強く頷く。


「昨日営業部で急に発表があったらしくて……。
なんか、笹川専務が辞めた関係で、営業部内でも異動があったりしたみたいで、営業部内では会社全体への発表よりも前に報告があったみたい」


“営業部”って言葉が引っかかって、少し顔が強張る。
拓海くんもその場にいたのかな……。

でも昨日拓海くんは、『なのに、社長も俺をクビにしてくれないし』って言ってた。
って事は、社長と何かしら話をしたって事。

拓海くんと社長は……どんな会話をしたんだろう。


「あ、でもね、一課では異動者はいなかったって。
二課の課長が、営業部全体の部長に昇進して、課長の後任には、宮坂とかいう人が選ばれたみたい。
ほら、眼鏡かけてて背が高くて無愛想な人」
「え……」


頭の中に、宮坂さん顔が浮かぶ。


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