月とバイオリン
もう一人でどこにも行かせないわ。

「そう、……かな」

「そうなのよ」


 自信にあふれ、シェリーは深く頷いた。

そして、自信にあふれて聞こえていればいいけれど、と思っていた。


 清かな風に顔を上げれば、壊れた窓からは月が覗き込んでいる。

シェリーの動きにつられたのか、見上げたウィルの顔は光に照らされ、瞳の色がやっと判った。

ロージェブラウン。

誰かの瞳に似ていると、目を覚ました記憶が囁いた。

さわさわと揺らめき漂うように、誰かの姿が浮かんで消える。


 あたたかい土の色。



大切な人だから憶えていたのよ。憶えていて、つなぎ合わせて、めぐり逢えたわ。ここで、ウィル、あなたに。


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