月とバイオリン

 だから。正しいのだと思うわ。

シェリーはこの踊り場に迷う思いを捨て去った。

階段のあと七段は駆け上り、闇の廊下を目指す部屋までまた駆ける。

見える限り、灯りがもれているのは唯一この扉だけだ。

何より、音がもれ出でている。

子供の頃に覚えた通りに、礼儀正しく扉を叩く。


三回。



――答えはない。


 大きく息を吸い込んだ。

外の音には、背中が向けられている。

ノックをしての入室を、と頑張ったけれど、どうやら結果には繋がらなかったようだ。


扉は軽く、中へと開く。
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