月とバイオリン
美しい音色だと、確かに私にもそう聴こえたヴァイオリンの音。

だけど、比較するものがないから、シェリーがなぜそれほどに特別を感じるのかが、わからない。

比較するものを求めてしまう時点で、私には理解できないものなのだろうと思う。

シェリーだけが感じ取る密かなものを、彼の音は隠しているのだろう。


 ふう。

考えをこねくり返していても、どうにもならないことはわかってる。

とにかくは、初めの一歩を委ねることのできそうな足がかりを探そう。

やってみたら、大したことではないかもしれない。

あのはるか空の上の、頂上を目指して登ることくらい。



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