久遠の花〜 the story of blood~【恋】





 ここは……どこ、だろう。





 考えついても、自ら動くという行動はとれなくて――。どこまでも、どこまでも。流れるだけの世界。





 ?――――止まっ、た?





 どれぐらい漂ったのか。静かに、体が停止する感覚がした。

 周りを見ても、なにかあるわけじゃない。ぶつかって止まったというわけではなく、その場に停止している、という表現以外、適切な言葉が思いつかない。





 〝戻る時は――近い〟





 音が、辺り一面に響く。どこから聞こえるのかと再び見渡せば――突如として、大きな鏡が目の前に現れた。透明なそれは、私以外映していない――はずなのに。





 鏡に映ったのは、紫色の瞳をしていた。




 *****


 仕事を終えた桐谷は、足早に家路へと向かっていた。美咲の様子が気になるのはもちろんだが、今彼の気を速めているのはいるのは、それだけではない。

 ……つけていますね。

 人ではない気配を感じ、桐谷は家とは別の方向へ足を向かわせた。
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