久遠の花〜 the story of blood~【恋】
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夕方から、私はまた痛みに襲われていた。とは言っても、今までの痛みに比べたら軽い。
おじいちゃん、今頃なにしてるかなぁ。
先生がうまく話してくれてるらしけど、ちゃんと食べてるかとか。一人で大丈夫かなって、心配になってくる。
――――電話、してみよう。
声が聞きたくなり、私は携帯で、自宅へと電話をかけた。
『――――はいはい。日向ですが』
「おじいちゃん。私、美咲だよ」
『おぉ~美咲か。大丈夫なのかい? 電話なんてかけて』
「うん。前よりよくなったから……話したく、なっちゃって」
『ははっ。美咲は淋しがり屋じゃのう。よくなってきたのらな、もうすぐ帰れるのかい?』
病院に長くいたことがあるのに、たった数日で、自分でも驚くほど淋しがっていた。
きっと、これがただの療養じゃないから。元気になっても、私を狙う人たちが、家まで来ないとも限らない。考えたくないけど、もしかしたらもう、会えないんじゃないかって……。
『美咲? 美咲、どうしたんじゃ?』
「――――えっ」
『なんともないのか?』
「あっ、うん。ちょっと、ぼぉーっとしてただけ」
『まだ病み上がりのようじゃな。そろそろ、休んだ方がいいかもしれんぞ』
「うん。そうするね」
名残惜しいながらも、私は電話を切った。
早く力が使えるようになりたいけど、それが少し怖いと思う気持ちがあった。力が使えれば、自分で自分を守れるようになるらしいけど……危険度も増す、ってことなんだよね。
私から出る匂いが、狙う人たちを惹きつけてしまう。今まで抑えていたわけだから、それが解禁される瞬間は、特に注意をしないといけない。
自分ではどんな匂いなのかわからないし、その瞬間がどうやってくるのかもわからないから……だんだんと、恐怖が強くなってしまう。
「――まだ、寝てるのかなぁ」
月神君は出かけてるみたいだけど、先生と雅さんは部屋にいる。先生は気を使って来ないんだろうけど、雅さんは元気だったら侵入して来そうなのに……こういう時、いつもみたいに来てくれたらいいのにって思ってしまう。