久遠の花〜 the story of blood~【恋】

 ◇◆◇◆◇


 夕方から、私はまた痛みに襲われていた。とは言っても、今までの痛みに比べたら軽い。

 おじいちゃん、今頃なにしてるかなぁ。

 先生がうまく話してくれてるらしけど、ちゃんと食べてるかとか。一人で大丈夫かなって、心配になってくる。

 ――――電話、してみよう。

 声が聞きたくなり、私は携帯で、自宅へと電話をかけた。


『――――はいはい。日向ですが』

「おじいちゃん。私、美咲だよ」

『おぉ~美咲か。大丈夫なのかい? 電話なんてかけて』

「うん。前よりよくなったから……話したく、なっちゃって」

『ははっ。美咲は淋しがり屋じゃのう。よくなってきたのらな、もうすぐ帰れるのかい?』


 病院に長くいたことがあるのに、たった数日で、自分でも驚くほど淋しがっていた。

 きっと、これがただの療養じゃないから。元気になっても、私を狙う人たちが、家まで来ないとも限らない。考えたくないけど、もしかしたらもう、会えないんじゃないかって……。


『美咲? 美咲、どうしたんじゃ?』

「――――えっ」

『なんともないのか?』

「あっ、うん。ちょっと、ぼぉーっとしてただけ」

『まだ病み上がりのようじゃな。そろそろ、休んだ方がいいかもしれんぞ』

「うん。そうするね」


 名残惜しいながらも、私は電話を切った。

 早く力が使えるようになりたいけど、それが少し怖いと思う気持ちがあった。力が使えれば、自分で自分を守れるようになるらしいけど……危険度も増す、ってことなんだよね。

 私から出る匂いが、狙う人たちを惹きつけてしまう。今まで抑えていたわけだから、それが解禁される瞬間は、特に注意をしないといけない。

 自分ではどんな匂いなのかわからないし、その瞬間がどうやってくるのかもわからないから……だんだんと、恐怖が強くなってしまう。





「――まだ、寝てるのかなぁ」





 月神君は出かけてるみたいだけど、先生と雅さんは部屋にいる。先生は気を使って来ないんだろうけど、雅さんは元気だったら侵入して来そうなのに……こういう時、いつもみたいに来てくれたらいいのにって思ってしまう。
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