久遠の花〜 the story of blood~【恋】
「次敬語使ったらどうなるか――忘れた?」
そう言えば、前にそんなこと言ってたような気が。
「ってことで――もう一回しようか」
顎に手を当て、キスをする体勢に入る雅さん。思わず手で顔を覆い、無理だからと断り続けた。
「えぇ~約束したじゃん」
「してませんっ! そ、そんな軽々しくするものじゃないのに」
「結構真面目なんどけどなぁ~。ま、次は容赦なくするから――そのつもりで」
ものすごく満面な笑みで、一方的な約束をされてしまった。
とりあえず、今はこれ以上迫ってくることはないみたいだけど、次は容赦なくって言ってるあたり、本当の本当に実行にうつしそうだ。
「――――まだかかるの?」
ドアの向こうから、さっきの人の声が聞こえる。
雅さんが返事を返すと、男の人の案内で、雅さんに抱えられながら移動を始めた。
*****
竹林の道を進むと見える屋敷。もはや信用出来るのは一人だけだと、桐谷は蓮華の元を訪ねていた。門の前に着くと、門番は桐谷の姿を見るなり開け放った。
相変わらず、平穏な雰囲気の屋敷。ここは外とは違い、気の流れが心地よかった。
「――事が急変したか?」
「察しのとおり。あの二人は信用が置けなくなりましたので、蓮華さんに頼ろうかと」
「怖い顔をしよって。少しは気を静めろ。色を変えたままだぞ?」
指摘され、桐谷は徐々に力を抑え始めた。
そして美咲のことだけでなく、叶夜と雅に起こった変化を説明した。美咲のことは多少予想していたのか、驚く素振りは見られない。だが叶夜に関しては、目を見開いて話を聞いていた。