久遠の花〜 the story of blood~【恋】
「消した部分が――再生し始めていたのか?」
「確認したわけではありませんが、立ち去る前に見た手は、骨組が出来上がっていたように思います」
「いくら手だけとはいえ、そのように回復する存在が王華にいるとは――」
「実験の成果でしょう。貴方と同じような存在を欲していましたから」
一瞬、蓮華が眉をひそめる。思い当たる節があるのか、顎に手を当て思案しているように見える。
「――雅とやらから、連絡は無いのか?」
「えぇ、全く。まだ自我を失うことは無いでしょうが、最悪、発症した彼等を相手にすることになりますね」
「ならば出るぞ。行く場所など、あちらの世界以外あるまい」
廊下に控えていた女中に、いつものを、と言い何かを取りに行かせた。蓮華が頼んだのは、お護りのような巾着袋。じゃらじゃらっとガラス玉のような音がする中身は、数珠が二つ入っていた。
「これを付けろ。冷静に戦えなくてはかなわぬからな」
渡されたのは紫色の数珠。左手に付けるのを見ると、蓮華も自分に透明な数珠を付け歩き始めた。
「――――予知のことだが」
竹林の中、蓮華は足を止めた。
周りに誰の気配も感じないことを確認し、続きを告げる。
「当たっておれば、シエロが現れるぞ」
桐谷にとって、またしても驚くことを告げた。