久遠の花〜 the story of blood~【恋】

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 これが選択なら――。

 答えなんて、とっくに決まってる。


 *****


 未だ、自由に動かない美咲の体。だが、視線を動かすことだけは辛うじてできていた。

 誰も来ないと思った。ましてやまた会えるなんて……。しかも、自分を置き去りにした相手が、今度は取り返す為に戦っている。もしかしたらまた……と、考えないわけじゃない。それでも今は――。


「も~ちょいっ! すぐ行くから、ガマンね?」


 置き去りにする前と変わらない。美咲に向ける眼差しは、むしろ以前にも増してやわらかくなっている。どんな意図があろうと、今自分を助け出そうとしているこの姿を、美咲は信じたいと思った。


「懲りずに向かってくるか。だが――」


 ニヤリ、長の口元が緩む。僅かずつでも距離を縮めていた雅だが、ある一定の距離に来ると、それ以上先に進むことが難しくなってきた。


「アレに敵う者は――この場にいない」


 呟くと、美咲の耳元で長は続ける。


「我とて、このまま制御出来るわけではない。アレをどうにかしたいなら――」


 じわり、美咲の足元に冷気が漂う。視線を下に向ければ、黒い液体がまとわりだしていた。


「受け入れろ。そうすれば、アレも大人しくなる」


 自分が取り込まれることにより、全員が助かるかもしれない。桐谷ですら苦戦している現状を見れば、このままならどうなるか想像ができる。だが、それで本当に助けることができるのか。少なからず、美咲は長の言葉に疑問を抱いていた。


「別に死ぬわけではない。ただ――戻るだけだ」


 微かに、美咲の眉が歪む。それを否定と解釈した長は、深いため息をついた。


「なるほど。見殺しにすると言うわけか」


 鼻で笑うと、長はカツン、と靴を鳴らした。途端、美咲の前に走る赤い線。あまりにも早い動きに、頭は何が起こったのかと処理をするのに手間取っていた。





「ほう、四肢を貫かれても声を上げぬとは」





 走ったそれは光じゃない。とめどなく溢れ出るそれは――。
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