久遠の花〜 the story of blood~【恋】
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「――日向(ひなた)さん、聞いてる?」
「あ、ごめんなさい……。ちょっと、考えごとしてて」
「体調悪いかと思っちゃったよ。それで、隣の席の男子なんだけどさ」
ふとした時、あの日のことを考えてしまう。あれから彼らを見ることはなく、本当に幻覚だったのかと思う時もあるけど……私に触れた感触は、本物のように思えてならなかった。
「黒の眼鏡が印象的で、顔は普通って感じ。特にパッと目立った感じもない人で、髪がぼさぁ~ってしてて――あ、ほらほら。あの人」
倉本さんが、教室に入って来た男子を指差す。その男子が私の隣の席の人らしく、どんな人なのかを色々と話してくれた。
「とりあえず性格は真面目みたいだから、きっと日向さんもすぐに慣れるよ」
「教えてくれて、ありがとうございます」
「コレぐらい気にいしないでよ。じゃ、席に戻るね!」
入学式の時から仲良くなった倉本さんは、久々に登校して来た私に、真っ先に声をかけてくれた。正直、倉本さん以外の人は覚えていなかったから、こうやって話してくれたのが嬉しい。
「――久しぶり」
振り向くと、そこには隣の席の男子が立っている。久しぶり、と言う言葉に、私は頭を悩ませた。
「えっと……ごめんなさい。初めて、じゃないですか?」
その言葉に男子は微笑み、会ってるよ、と言い席に着く。