久遠の花〜 the story of blood~【恋】


「多少の誤差があるにせよ、力が働いている気配が無い。あるのは、“あちらの種族”の気配だな」

「!? では、これからあの子は……」

「危険になる可能性は高いだろう。ここの家だけでも、強化はしておく」

「お願します。この体では、盾になることも出来るかどうか」

「そんなことは考えるな。――“命は粗末にしないように”、だろう?」


 その言葉に、年配の男は一瞬、はっとした表情を浮かべる。


「あなたが約束を破っては、彼女に怒られるのではなかったか?」

「――そうですね」


 それは年配の男にとって、懐かしい者の言葉。

 確かにそれを破ってしまえば、何をされるか分かったものじゃないですねと、年配の男は小さく笑っていた。


「せいぜい、叱られないようにしましょうかね」

「そうしろ。精々、しぶとく生きることだ」


 和やかな雰囲気で進む話。けれど、その内容は極めて危険で。

 これから起こるであろう出来事に、二人は警戒を強めていった。


 ◇◆◇◆◇


 公園まで来ると、私はベンチに座っていた。
別に体調を悪くしたわけではなく、どうしてか、ここで待っているよう言われてしまった。

 ちょっと退屈し始めた頃、自分の方に走って来る一人の姿が見え――それが次第に、あの少年だというのがわかった。


「ごめんねぇ~。はい、コレお詫び」


 そう言って、少年は私にフルーツの缶ジュースを差し出してきた。


「そんな、あなたにそこまでしてもらうなんて」

「気にしないの。ってか、名前で呼んでよ。呼び捨てなら尚いいけど」


 私に缶を渡すと(半ば強引に)、少年は横に座り、ジュースを飲み始めた。
< 38 / 296 >

この作品をシェア

pagetop