久遠の花〜 the story of blood~【恋】
「飲み込め」
言われるまま、口の中にあるものを飲み込んだ。
すると、体が妙な感覚に囚われた。熱いような、胸が苦しいような――…。
全身にその感覚が行き渡った時、もう、嫌な光景は見えなくなった。
声も聞こえなくて、今聞こえるのは、雅さんの声だけ。
「オレが――わかる?」
ゆっくり、視線を絡ませる。見えたのは、真剣な表情をした雅さん。よく見れば、口元が汚れていた。
これ、って……血?
口の中が、鉄の味がする。ケガなんてしてないのに、どうしてだろうと思っても、まだ頭が回ってくれなくて質問できない。
「落ち着いたか。――そのまま寝てな」
意識が薄れる。
言われたからではなく、私はその感覚に、身を任せた。
*****
仕事を終えた青年が、自宅へと帰りつく。
ラフな格好になり、リビングにあるソファーへと腰掛けると――近くに、何かがいる気配を感じた。
二人のどちらかでも来たのかと思いながら、青年は窓にいるであろう人物に呼びかける。けれど反応が無く、どうしたのかと思いカーテンを開けると、
「一体何を……?!」
そこに人物を目にした途端、青年の顔色が変わった。目の前には二人の人物がおり、一人はこの前来た少年。
「ミヤビ……貴方は、彼女に何をしたんですか?」
そしてもう一人は――美咲、だった。
怒りを抑えながら、青年は問う。それに雅は、冷静に事情を説明した。話を聞き終えると、青年は重いため息をもらしながら片手で頭を押さえた。