久遠の花〜 the story of blood~【恋】
「あそこに、行ったのですね?」
「はい。美咲ちゃん自身も、どうやって行ったかわからないみだいで」
「何者かが手を貸したのでしょう。暴れたのは多分、あちらに行ったことが引き金でしょうね。貴方が特に何もしていなければ、ですがね」
美咲をソファーに寝かせると、青年は毛布をかける。
そしてしばらくの沈黙後――青年は再び、話を始めた。
「今後も何かあるようでしたら、こうやって連れて来てもらえると助かります」
「そーします。オレじゃあ手当とかムリですし」
「お願いしますよ。念の為薬を持って来ます。その後、彼女を送って下さいね」
青年は薬を調合する為、一旦部屋から出て行った。
残された雅は、美咲のそばに行くなり膝をつく。そして起こさぬよう、そっと頬に触れた。
「こっちがあげるなんて――ホント、調子狂う」
今にも消えそうな、悲しみを帯びた声。
美咲に対して、何を思っているのか。唇を噛みしめながら、雅は美咲を見つめていた。
「体調が悪いのですか?」
戻って来た青年に心配された雅は、何事も無かったかのように振舞う。
「それじゃ、美咲ちゃん送りますね」
薬を受け取ると、美咲を抱える。
青年が外の安全を確認すると、窓から帰る二人の姿を見送った。
「貴方もいつか――レイナに」
ぽつり呟いた言葉。
それは、無意識に出た言葉なのか。
どこか儚げな音声は、虚しく夜に溶けていった。