久遠の花〜 the story of blood~【恋】


「その……いつ、家に?」


 しばらく黙る月神君。そして思い出したように、その時のことを話し始めた。


「初めて会った夜、送り届けた時にあがらせてもらった。すぐに起きるだろうと思い待ってたが、全く起きる気配が無くてな」

「それで……私になにかした、と?」

「いや。ただ、家の人には暗示をかけておいた」

「えっ!? おじいちゃんになにをしたんですか!?」

「安心してくれ。害は無い。さっきも言ったが、日向さんがなかなか起きないから、病院に連絡してもらったんだ。それと、オレの記憶を消した。他には何もしてない」

「それじゃあ……別に、部屋を物色とかは」


 恥ずかしながら言う私に、月神君はニヤリ、と怪しい表情を浮かべながら、


「なら、次はその期待に沿おうか」


 と、意味深なことを言って歩き出した。


「じょ、冗談ですよね!?」

「さぁ、どうだろうな?」


 それだけ告げると、月神君はドアの向こうへと行ってしまった。

 一人屋上に残された私は、月神君の真意がわからず、しばらくその場で混乱していた。


 *****


 太陽が真上になる頃。

 青年は一人、何やら準備をしていた。

 机の上には資料が散乱し、床にもそれが散らばっている。





「――、……!」





 叫ぶ声が聞こえ、青年は声のする部屋へと向かう。

 行ってみると、そこにいたのは以前訪ねてきた少年――雅の姿だった。慌てた雰囲気を察してか、青年は宥めるように話しかける。


「随分と早いですね。来るのは今夜のはずでは?」

「待ってられないんですよ。悪いけど……すぐに貰えませんか?」

 苦しそうに、雅は頼む。

 それに青年は軽くため息をつき、奥の部屋から何かを持って来た。


「一つ、注意をしておきます」

「なんですか? 早くそれが欲しいんですけど……」


 急かす雅に待ったをかけ、青年は続きを話す。
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