久遠の花〜 the story of blood~【恋】


「これは、あくまでも試作品です。これが確実に効く保障はありませんが……それでも?」

「……そんなこと」


 言うまでもないと、青年が手にしている物を奪う。

 それは、どこにでもありそうなタブレットタイプの薬。これが雅にとって、とても大事な物らしい。

 飲み終えてしばらくすると、雅の容体は落ち着き始めてきた。呼吸も整い、余裕の表情を浮かべられるほど回復している。


「本当にイイ物みたいですね」

「それはどうも。ですが、先程言ったとおり、これは試作品ですよ」

「わかってますよ。これでしばらくは保てそうです」

「……助かりたいなら、彼女に頼ることです。私のでは、せいぜい進行を遅らせることぐらいでしょうから」


 それを聞いて、雅は少し、苦い顔をした。

 頼りたくないのか、弱みを見せたくないのか。

 雅は特に何も答えることなく、別の話題を切り出した。


「本当に美咲ちゃん――命華なんですよね?」

「えぇ、間違いないですよ。そんなことは、近付いた貴方が一番知っているでしょう?」

「念の為ですよ。だったら早く、目覚めてもらわないと」

「だから今日呼ぶのです。少々強引ではありますが……今後のことを思うなら、それが一番でしょうからね」


 あまり気乗りしないのか、青年はどこか不安げだった。

 美咲には、今夜あることをしてもらう。それによっては、今後の行動に影響するほどのことを。


「――聞いても、いいですか?」


 不意に、雅は訊ねる。

 それに振り返り、青年は次の言葉を待った。
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